小説を書く前には、必ずバックグランド(世界観)を少しでも考えよう | 小説の書き方講座

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小説を書く前には、必ずバックグランド(世界観)を少しでも考えよう

バックグランドを最初に設定しておく理由

現代小説でも、ライトノベルでも、小説を書くには物語の「舞台」となる「場所」「世界」を考えなくてはなりません。現代小説で、しかも「日本国内」であれば特別何かを考える必要はなく、日本の、特にどの地域を中心に考えて物語を書くのかを決めると良いでしょう。
しかし問題はライトノベルを書く場合です。ファンタジーの世界を考えるというのは、実は想像以上に難しい……ということを、皆さんはご存知でしょうか。
例えば……

 

■ 宗教は存在するの?
■ 政治経済はどんな状況?
■ 派閥はある?
■ 流行は?
■ モデルにする時代設定は?
■ 世界に住んでいる人たち(一般庶民)は、毎日どんなものを食べ、どんな服を着て、どんな仕事こなし、どれくらいの賃金を得て、何を楽しみに生きているの?
■ (毎週休日は教会に通うなどの)皆に共通した習慣はあるの?
■ 偉い人たちって、どんな地位でどんな暮らしをしている? その地位はどうやって維持されているものなの?
■ 多くの人々が日々望んでいることって何かな?

 

……などなど、多くの事柄を考えなくてはなりません。
なんといっても世界を創造するのですからね!あなたはつまり世界の創造主・神になるわけです。
どうしてそんな面倒くさいことを、いちいち考えなくてはいけないわけ?
なんて、思いました?そんなの、書きながら決めればいいよ!とか、思ってます?
いいえ、それは大きな間違いです。世界を考える事は、情景描写・心理描写において重要な役割を果たすのです。
例えばここで、何も考えずに小説を書いた場合、どんなミスをしてしまうか、具体的な例を挙げて考えてみましょう。※読みやすさを考えて、改行ごとに行を空けています。

「ここで適当な服に着替えな! さっさと済ませるんだよ!」

 リセルはどん、と背中を押され、海賊船の一室にむりやり押し込まれた。

 狭い室内は、呼吸をすることすらためらわれるほど、酷く生臭い。部屋の隅にあるのは大きなタンスと、椅子の上に置かれたろうそくのほのかな灯りだけ。もともとはキレイな木目が見えていたであろう壁や床や天井も、埃や蜘蛛の巣にまみれてうす汚く、まるで雲の中にでもいるような感覚を受ける。

 恐る恐るタンスに手をかけ、中からヨレヨレのズボンとTシャツを引っ張り出したリセルは、泣きながら着ていたドレスを脱いだ。

 

さて……ちょっと、胡散臭すぎましたかね(笑)。

しかしこれに似たような文章内の表現を、時代や世界設定をきちんと決めないうちに執筆してしまう初心者の小説の中に、多く発見するのは確かです。
上の文章の中で、何がおかしいのか分かりますか?
「Tシャツ」がおかしいという事はすぐに分かると思います。海賊船があるような時代には(確かに現代にもまだ海賊船なるものが存在しているようですが…)、「Tシャツ」ではなく、単なる「シャツ」。もしくは「チュニック」とするのが正しい表現です。
さらに「タンス」もおかしい。タンスはご存知の通り「日本語」であり「箪笥」と書きます。海賊船の中にあるものとしては、似つかわしくありませんね。ここでは「衣装ケース」や「大きな木製の箱」。また、中世を時代モデルとしているのであれば「チェスト」としてもおかしくはありません。



そしてもう一つ……。ろうそくもおかしいという事が……分かりますか? 船は揺れるものです。揺れるものの中に、倒れて火事が起こりやすい、裸のろうそくなんて、普通は置きません。ランプの中に入れているのが普通ですよね。
また、海賊船に捕らわれるということは、奴隷となったも同然。しかもそれが女であるならば、肉体的にも海賊どものいい慰み者として使われることは明白……そんな世界観を設定し、前もって記述しておけば、リセルが流した涙の重みが読者にもきっと伝わるはずです。



 バックグランドを設定しておくということは、小説をいかに思い通りに仕上げるか。その戦略を練ることと同じなのです。

自分が創造する世界を具体的に、できるだけ細かく考えること

さぁ、では他のことも考えてみましょう。

 

たとえば、人々が食事をする時……、使っているスプーンやフォークが何で出来ているのか、考えた事はありますか? 中世をイメージするなら「銀」が思いつきますが、一般家庭に「銀食器」など存在しません。あるのは木製や陶磁器。



そんなの、別に意識しなくても

ただ普通に「スプーン」や「フォーク」って
書けばいいじゃん?



確かにそうですね。そこまで深く考えなくても良いかもしれません。しかし物語を書いていくにあたり、より多くの世界知識……「情報の引き出し」を持っておくことは必要です。その引き出しが少なければ少ないほど、情景描写・心理描写に困ることになります。逆に多く持っていれば、ちょっとした文章と文章の「間」を埋めることもたやすいでしょう。



 

具体的に例を挙げると、例えばこのスプーンが銀であれば、顔を映すことができます。

良く磨かれていればキレイに映るし、曇っていればぼんやりと映ります。陶磁器であればさらにぼんやりと映りますが、木製では顔は映りません。
これを小説内で使ってみると、磨かれたスプーンに憂鬱そうな顔を映せば、裕福なのに満たされない感情や、お金はあるけど愛がない家族構成などをにおわせることも出来るでしょう。逆に曇ったスプーンに晴れ晴れとした笑顔を映せば、これから何か大きなことをしでかそうと(よからぬ事、よこしまな事)野心に燃えるキャラの心情を表現できますし、キャラに仕えている下々の無能さも感じさせることができます(スプーンすらまともに磨けないという意味で)。



陶磁器には平凡な暮らしをする平凡なキャラの日常を反映させることができますし、ひびの入った木製のスプーンを使っていれば、とても貧しい暮らしをしているのだと分かります。
たかがスプーン一つでも、これだけ様々に表現を分けることができるのです。もっと多くの事を考えれば、より多くの表現に役立つでしょう。



また、ファンタジー世界における「トイレ」の存在を考えたことはありますか? お風呂の存在は? みんなどこでどのように用を足し、どのように体を洗っているのでしょうね? 石鹸はあるの? 頭を洗う時はどうする?
旅の最中は仕方がないにしても、宿に泊まった時に石鹸を使えるとすれば、湯上りに良い香りのする女性キャラにちょっとドキッとする男性キャラを表現するシーンも書けますね。お風呂がなく、部屋にある小さなついたての向こう側で、大きなたらい桶の中にしゃがみ、沸かした湯の入った水差しを少しずつ傾けて湯浴びをするなら、さらに男性キャラにとってはドキドキするシーンになります。



1回目では覗けなかったけれど、長く旅をして、仲が良くなるにつれ、どうしても見たくなって行動に出るのだが……というシーンを書くだけで、男性キャラの女性キャラに対する感情の変化を表すことも出来ますよね。まぁ、トイレについてはともかくとしても、ファンタジーの世界で、キャラたちは一体、毎日どのように暮らしているのか。それを考えるためにも、バックグランドは重要です。



人々の生活ぶりを想像できなければ、

生活感を出すことが出来ず、
読み手に「時代」や「世界」をにおわせることが出来ないのです。



それが出来なければ、読み手をファンタジー世界へ引き込むことが出来ません。さて、貴方が創造する「におい」のある世界設定とは、どんなものなのでしょうか?

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