読者に魅力的だと感じさせる、人物表現のポイント | 小説の書き方講座

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読者に魅力的だと感じさせる、人物表現のポイント

人物を表す三つの表現方法・その1・抽象的な表現

人物の描写には、直接的な表現方法と、間接的な表現方法、そして抽象的な表現方法の三種類があります。

 

↓抽象的な表現方法<例>↓

街灯が等間隔に照らす住宅街の細い路地で、真夜中、メイド服を着た可愛らしい少女が座り込んでいたら、声を掛けるか否か。

 

上記のように、「美しい」「綺麗な」「愛らしい」「上品そうな」「凛とした」「か弱そうな」などの抽象的な言い方で、人物の特に第一印象を表現することができます。私たちが普段、人を見るとき、まずはざっと全体を見て、この第一印象を持ちますよね? この第一印象というものは物凄く大雑把なものですが、その人の見た目の「全て」が詰まっているもの。顔立ちや体格だけでなく、「利発そうな」や「純真そうな」などの表現を使えば性格までをも表すことが出来ます。

 

人が「美しい」と思う基準は皆それぞれに違いますよね。私は唇のふっくらとした女性に魅力を感じますが、薄くて大きな唇の方が美しいと感じる人もいるでしょうし、つんと尖った小さな口が好きだという人もいます。この抽象的な表現方法は、人物の姿の基準を読者本人の想像力にある程度任せる事ができるので、大変に重宝します。
しかし残念ながら、あまりに大雑把すぎて情報が足りないため、この表現方法を使用する際には、物語の各所でより詳しい設定情報を書く必要があります。例えば以下のような方法で、情報を補います。

 

リィが呪文を唱えると、周囲の大気が手のひらで円を描き始めた。こげ茶色の長い髪が風に巻き上げられ、炎のごとき動きで揺らめく。緑色の瞳が黄金色に変わり、頬がほんのりと紅潮。唇が言の葉を紡ぎ終わると、リィの手の上には巨大な竜巻が空気を震わせながら直立していた。
「……舞え」
細く白い指先が少し傾いたかと思うと、竜巻は白い龍が暴れるが如き動きで周囲の木々を次々と無残になぎ倒した。

 

これでただ「美しい」とだけ表現されていた人物が、具体的にはどんな髪の色、目の色、肌の色をしているのか、読者に知らせることが出来ます。色には好みもありますが、「緑の瞳は嫌いだ」「白くて細い指は嫌いだ」という反応を示す人は滅多にいません。たったこれだけの事で、この人物は読者の中で勝手に読者好みに想像されます。物語が進むにつれて、性格も明らかになってきますが、気が強ければ、気が強いなりの。子供っぽいのであれば、子供っぽいなりの。それら性格に似合い、かつ、読者の好きな外見が勝手に想像されていくわけです。「美しい」と一言で言うのは単純過ぎるように思われますが、だからと言って、決して何の効果もないわけではありません。この単純な言葉一つで、充分な場合もある……ということを、よく覚えておいてください。

人物を表す三つの表現方法・その2・直接的な表現

これは多くのラノベでよく見かける表現方法です。

↓直接的な表現方法<例>↓

ふんわりとした栗色の巻き髪に、気の強そうな瞳。制服を押し上げる胸は少々頼りないが、しっかりと丸みを帯びたヒップラインが女らしさを強調している。

 

このように、人物の体の各パーツを細かく記し、具体的な姿を思い浮かばせる方法ですね。
しかし、この表現方法を使用する際、気をつけなければならないのは、すべてを詳細に書きすぎないことです。髪型、眉、まつげ、瞳、鼻や口や耳に首、さらに胸やウエストや手足についてまで細かく書かれていては、正直くどいと思いませんか?

 

またさらに細かく表現しようとすると、「水晶のような瞳」「赤ちゃんのようにキメの細かい肌」など、「〜のような」を連続して使用することになります。つまり「絹糸のようになめらかな髪は緩やかに流れる小川のごとく流麗で、唇は朝露を浴びたバラのようにみずみずしく、しなやかに伸びた肢体は細くて力強い鹿を思わせ……(さらに続く)」という、やりすぎた表現を招くわけですね。

 

 人物の外見を細かく書き表すことが、上手な人物描写ではありません。

 

人物描写とは、人の行動をいかに自然に書き表すことが出来るかが、重要なポイントなのです。
見た目の表現はほどほどで良いのです。描写とは描くこと。人を描くこととは、動きを描くことですよね。いかに本物らしく、生きている息遣いが感じられるほど自然に表現できるかが勝負なのです。

 

人物を表す三つの表現方法・その3・間接的な表現

人物の動きを詳細に記すことで、人物の性格や人物像を読者に想像してもらう表現方法です。

 

↓関節的な表現方法<例>↓

 村崎は毎朝6時ピッタリに起きる。パジャマ姿のまま朝食も食べず、髪にブラシを通すことも顔や歯を磨くこともせず、ただ真っ先に眼鏡をかけて行うことは、パソコンのスイッチを入れること。
それから部屋のカーテンを開け、モーニングコーヒーを淹れたら、すぐにプログラミングという作業に入るのだ。村崎は椅子の上で体育座りをしながらキーボードを叩くクセがあり、その姿勢で1日平均13時間を過ごすため、お尻の一部分に最近床ずれが出来た。
土日は外でマネキンという接客業をしているものの、平日は在宅ワーク。自宅のパソコンでの仕事が基本だ。まだ22歳だと言うのに、激しい運動不足からか、天気の悪い日には膝が傷むようになったことを酷く悩んでいる。

 

このように、人物の行動やクセなどから、読者にどんな人物なのか(外見を)想像してもらいます。ちなみに上記は私の日常ですが、何か?(笑)。
勿論、これだけではありません。

 

■ ミチルが肩に垂れた髪をゆっくりと耳にかけたとき、その手つきの色っぽさにリヒトは思わず見入ってしまった。

 

■ せっかくのドレスがシワにならないよう、ミチルはお尻の辺りを整えてから椅子に座った。

 

■ リヒトが投げたペットボトルは、空中で大きく弧を描いてから、ガランとゴミ箱に入った。

 

最初の一文では、手つきが色っぽいことを書いてしまいましたが、二番目では几帳面さがうかがえますし、三番目では面倒くさがりな性格を表現できます。

 

人物描写ではちょっとした仕草がとても重要なのです。

 

その時、その人物がどんな行動をとったか。それをいかにして書き表すかに重点を置いて描写の仕方を考えましょう。
ただし、何事もやり過ぎは注意です。行動の全てを事細かに書き表していたのでは、行数がいくらあっても足りません。「ここを魅せたい!」という時に、上手に使うようにしましょう。

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