物語を様々な視点・角度から切り、考えてみること | 小説の書き方講座

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物語を様々な視点・角度から切り、考えてみること

ストーリーの切り口について

専門学校在学中に講師として招かれた方の中に、元はラノベ作家だったが2年で引退。その後はずっと出版社で編集員として勤めつつ、下読み(応募作品を読んで評価を与える役の人)をしている、という男性がいらしたことがありました。その方がこんな事をお話してくれたことを覚えています。

ライトノベルでは「王道パターンはすでに出尽くした」と言われていますが、この所謂「王道」から学ぶ事は非常に多いと思います。
例えば魔王を倒しにゆく勇者の話を書こうと考えたとします。しかし当然、そのまま書いたのではなかなか面白いものに仕上がりそうもありませんね。
しかしもし、この勇者が「ニセモノ」だったらどうでしょうか?

 

主人公は自分がニセモノであるとは知らずに勇者だと信じ、命を懸けて戦いますが、実際には「本物が現れなかったが、教会は民に権力と力を見せつける為にどうしても勇者が必要だった。そこでニセモノをでっちあげることを思いついた」としたら?
教会がニセモノである事実を隠すために数人のサブキャラたちをを護衛につけ、裏で必死に工作をさせるんです。例えば、勇者が手にすると光り輝く石を、わざと魔法で光らせたり。勇者にしか扱えない剣をすりかえたり。魔法の使えない主人公に、魔法が使えていると思わせる為、陰で必死に呪文を唱え続けるサブキャラの様子なんかは、何となく面白そうですよね。
しかし実際に魔王を倒すには、勇者しか使えない特殊な魔法が必要で、教会はずっとそのことについて頭を抱えていたとします。読者には「ニセモノなのに魔王を封印できるの!?」と多くの疑問を投げかけておくことが重要になるでしょう。しかしラストで、すっかり勇者になりきっている主人公は、自らのパワーと気合とノリと運をフルに活かした、物凄く邪道で、尚且つ破天荒な方法を使い、むりやりこの魔王を封じてしまうんです。

 

勇者でもない人間が魔王を封じたという事実は、教会を震撼させました。そして次は、「新たな敵が現れた」と見せかけて、教会が正体を隠しつつ、勇者の命を狙ったりするんです。
ストーリーを見る角度を少し変えるだけで、王道とはまた違った味わいの物語が完成したりします。
王道はどこを切っても「どこかで見たことのある場面」「どこかで聞いたような話」が出て来る、言わば金太郎飴です。まっすぐ横に切っていくだけでは、同じ顔しか出てきません。しかし、そこをわざと少しナナメに切り、金太郎の顔を横長に見せることも。わざと飴を縦に切って、ちょっと見ただけでは金太郎だと分からなくする方法もあります。

 

新しい物語とは、そういう変形から生まれるものでもまだまだ通用するし、ストーリーとして成り立ちます。読者の意表をつかなければならないので、多少アイディアが必要ですが……。確かに、独創性豊かな、全く新しい物語を作れることこそ素晴らしいですが、例えそれが出来なくとも、面白い作品を生み出すことが出来ないわけはありません。皆さん、是非、ご自分が作ったプロットをもう一度眺め、切り口を変え、作品にひねりを加えてみてください。

この時、私も考えました。昼間は勇者、夜は魔王になる主人公だったら、面白いのでは? とか。自分が昼と夜で魔王と勇者に変わることは、主人公と読者には気付かれないようにし、最後のオチとして上手に使うことが出来れば……それもまた、一風変わった魔王と勇者の物語になるかもしれませんよね。
「全く新しい作品を生み出そう!」と意気込んで取り組むのは良いですが、読書経験も執筆経験も少ない状態では到底新しいアイディアまで辿り付けません。でも、他の作品のネタをパクるのはよろしくない。だとすれば、切り口を変えてみるのが一番良いのではないでしょうか。
魔王を主人公とし、正義、正義と掲げつつも金や権力に物を言わせて人々の心を操る勇者を倒す物語でも良い。全くの第三者に魔王と勇者の戦いを語らせて、結局どっちも他人に被害を与えてるじゃん! と説教を食らわせるのも良いと思います(ありきたりな例えばかりで申し訳ない……)。

 

 とにかくどんな物語でも「王道だから」と馬鹿にしないこと。「王道」は面白かったからこそ、誰もがマネするような物語……つまり「王道」になったのです。

 

王道から学ぶことはまだまだ多いと思います。鍛錬を積み重ねてゆくのであれば、まずは王道を極めることから始めると良いかもしれませんね。

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