物語を彩る文章形態を決定する | 小説の書き方講座

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物語を彩る文章形態を決定する

一人称と三人称の違いとメリット・デメリットについて

ここでは、所謂「人称」について説明していきます。
人称には一人称、二人称、三人称があり、世に出ている多くの作品たちは、一人称か三人称で書かれているものが目立ちます(勿論、二人称で書かれた名作もありますが)。
この「人称」を決めることにより、小説の「地の文」と言われる部分の書き方が決定することになります。

 

「人称」は、少々大袈裟に言ってしまうと、段落ごとに変えても良いと、私は習いました。それを成し遂げるには、かなりの文章力が必要なわけですがね(苦笑)。しかし、文章力には自信があるからと言って5行ごとに「人称」がコロコロ変わってしまうのでは読者が混乱してしまうので(混乱させないだけの文才があれば別だが)、せいぜい章ごとに変える……程度が無難な方法かもしれません。
例えば、プロローグは主人公目線の一人称で書き、一章は三人称で書いて、二章ではまた主人公目線に戻る……ということは可能だという事。これが出来ることによってどんなメリットがあるかと言えば、一人称の場合、語り手が参加しているイベントについて詳しく述べることが出来ても、遠くで起こっている異変や敵陣の様子については語ることが出来ません。しかし章ごとに――あるいは、数段落ごとでもOK――人称を変えることが出来れば、主人公の感情も詳細に記すことが出来るばかりでなく、身の回りで起きている数々のイベントについても書くことが出来るというわけです。

 

では実際にその「人称」とはどのようなものなのか、具体的に説明していきます。

 <一人称>

 

「私は〜」「俺は〜」「僕は〜」など、小説に登場する人物の視点で物語を描いてゆく方法です。個人の視点なので、心理状況を細部まで書き込むことが可能なため、恋愛小説などの心理描写が全ての鍵となるような内容の小説には、最強の人称となるでしょう。
一人称の場合、初心者の方の多くは、小説内すべての内容を語り手である「主人公(あるいは脇役)一人」で統一しようとします。確かにその方が、一人の人物に感情移入しやすいので、読者を強く惹き付けることが出来ますね。しかし「統一しなければいけない」という絶対的な規定はありません。

 

表現は無限大

 

専門学校の講師たちは、皆、揃ってこう言っていました。
ここで私が何を言いたいのかと言うと、語り手が変わっても良いと言う事です。語り手が多すぎるのは、感情移入する暇がないので問題ですが、主人公と脇役とを交互に語り役にさせるくらいであれば大丈夫ではないでしょうか。

 

大切なのは「こんな風に書かなくてはいけない!」という型にはまりすぎないこと。作品は個性です。個性があって良いのです。むしろあって当たり前で、自分が持っているものであれば、皆、出してしまうべきでしょう。
その時、その瞬間の自分の中で最も良い作品を生み出すためには、全力で取り組まなくてはならないのですから。
主人公と脇役を、章ごとに交代で語り手として使えるのならば、どちらか一人が参加している場面に限り、詳細に描くことが出来ます。

 

思ったこと、感じたことをそのまま素直に「キャラクターの感情」として表現できるので、一人称は初心者の方向きの書き方だと言えますね。
ただし、短所としては、キャラクターの感じ方と、読者の感じ方に違いが生じることが多い時、感情移入できない読者にとって、その物語は面白くないものになってしまうということ。
「ストーリー作りのコツ・1」の冒頭を読み返してみてください。
小説を書くためには、コモン・センスが必要不可欠です。
その考え方が、果たして読者に広く受け入れられるものなのかどうか…その点について良く良く考えながら、書くよう心がけましょう。

 

 <三人称>

 

「彼女は〜」「斉藤は〜」など、実際に小説の中には登場しない特別な視点で、物語を見ているままに書き表す方法です。
神視点と呼ばれていることもあり、誰もいない場所での情景描写であろうと、敵陣の様子であろうと、時間や空間を飛び越えて解説等を入れることも自在にできます。

 

しかし、三人称を使う場合は、キャラクター一人一人の感情を細かく表現できません。

 

他人が他人の心理を詳しく読み取れないのと同じように、物事を客観的にしか捉えることが出来ないのです。
三人称で書く場合は、キャラクターの言動の全てがその者の人間性や性格、感情などを8割がた表します。なので、キャラクターが主体となるファンタジーや歴史ものを書く場合には、大いにその効果を発揮するでしょう。
残り2割は客観的にでも表現できる内容がある為、あえて8割と言いました。

 

<例>奈々子には理解できなかった。孤児院で育った彼女には、母親の手だけが持っている特別なぬくもりなど、知る術もなかったのだから。

 

具体的には上のような文がその2割を示します。奈々子の心の中に渦巻いている感情を詳細に記すことはできませんが、こうすることで、読者に想像させることができます。
キャラクターの感情とは、特別「絶対に書かなければならないもの」ではありません。その心情を察することができるような、ちょっとしたきっかけさえ読者に与える事が出来れば、それだけで充分なのです。
神視点である三人称は、そういう意味では言わば「導き手」であると言えるでしょう。

 

さて、人称を決定したら、次はその「語り口調」を決めましょう。これこそが、まさに小説全体の雰囲気を出すものになりますので、しっかりと考えてくださいね。
貴方がこれからどんな物語を書いてゆくのか。
私はとても楽しみにしていますよ!

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